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その言葉をきっかけに、自宅から約三十メートルはなれたところに(十九、八平方?)の理容店を急いで建てました。お客さまとのコミュニケーションが十分にできるようにペアースタイルブックなどを作り準備しました。
昭和六十三年五月、独立し地元に、「ヘアーサロンユタカ」という理容店を開業しました。オープンしたとき、お客さまにヘアースタイルブックを見せ、身ぶりを交えたりの会話で通じあうように努力しました。通じあうのは、七十パーセント位であったようです。初めての人にもヘアースタイルブックを見せて選んでもらうように工夫していたようです。お客さんからの電話で連絡をとり、店まで携帯電話をもって行き、通訳をやるときもありました。
今、息子は時代の流れの急速な変化に備え、ヘアースタイルを研究し技術を磨いています。
また、喘息は医療技術の進歩により、自宅で治療しながら克服し生活しています。体をこわさないように注意しながら、一生懸命仕事に取り組んでいます。もちろん家族や主治医、手話のできるボランティアの人々のお陰です。
平成五年六月、山形県身体障害者福祉大会が鶴岡市市民文化会館で開催され、自立更生者表彰状を受けました。その日の感動はひとしおでした。
息子は耳の不自由にもめげず、世間の荒波を乗り越えて、家族の協力もあり、地域の人の理解も得て頑張っております。今、息子とともに歩いてきた四十一年間を振り返るとき、「泣いても何も解決しない。明るく笑ってすごそう」と思って歩いたことが、息子を一人前に育てることができたのだと考えています。

 

 

 

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